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【KYMR】Kymera Therapeutics カタリストとロードマップ

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【KYMR】Kymera Therapeutics カタリストとロードマップ

ハイライト

2025年12月11日:KT-621BroADen Phase 1b(AD患者)ポジティブ結果およびAD向け FDA Fast Track 指定を発表。約6.02億ドルの公募増資クローズも同時に開示(KT-621 P2b/3 と免疫パイプラインに十分な資金)。

2025年10月27日:first-in-class 経口IRF5 デグレーダー KT-579の新規前臨床データを ACR 年次総会で発表(自己免疫疾患に向けた候補として注目)。

2025年6月2日:KT-621 Phase 1 健常人試験の初回ヒトデータを発表。単回/反復投与で STAT6 をほぼ完全に分解し、Dupixent 並み(以上)の Th2 バイオマーカー低下を確認。

2024年7月8日:SanofiKT-474 / SAR444656 の HS/AD Phase 2 試験拡大を発表(安全性・有効性の中間レビューを受けて P2b 用量設定試験へ)。

2023–2025年:オンコロジー(STAT3/MDM2/IRAKIMiD)での初期 TPD 開発を一巡させたのち、Type2炎症・免疫疾患中心への戦略的ピボットを明確化。

Gilead との腫瘍領域 TPD 共同研究や Sanofi とのIRAK4 デグレーダー提携により、パートナー駆動のパイプラインも拡充。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:KT-621(STAT6 デグレーダー)— 中等〜重度アトピー性皮膚炎(AD)、喘息など IL-4/IL-13 ドリブンの Type2 炎症疾患を対象とする first-in-class 経口デグレーダー。

補足:Sanofi 提携の IRAK4 デグレーダー群(KT-474/SAR444656、KT-485)、自己免疫疾患向け IRF5 デグレーダー KT-579 が続く。

主要臨床成績
2025年Q4
KT-621 BroADen Phase 1b(AD)ポジティブ結果+AD向け Fast Track 指定

2026年Q1
BREADTH(喘息)Phase 2b 開始目標(Type2 呼吸器領域への本格展開)

2027年Q2
BROADEN2(AD)Phase 2b 主要データ readout 目安

2026年
KT-579(IRF5 デグレーダー)First-in-Human(Phase 1)開始目標

臨床試験パイプライン
Phase 2(進行中)
KT-621(STAT6・Type2炎症)

対象:中等〜重度アトピー性皮膚炎(AD)、喘息ほか IL-4/IL-13 ドリブン疾患

作用:STAT6 を選択的に分解する first-in-class 経口デグレーダー

Phase 1:健常人 SAD/MAD で >90% STAT6 分解、50mg 以上で血液/皮膚ほぼ完全分解。Th2 バイオマーカー低下は Dupixent 並み以上、忍容性はプラセボ同等。
Phase 1b:BroADen(AD)で深い STAT6 分解と AD スコア改善、合併喘息/AR も有望なトレンド。安全性良好。
Phase 2b:BROADEN2(AD)進行中(2027年Q2 readout 目安)/BREADTH(喘息)は 2026年Q1 開始予定。

Phase 2(Sanofi 主導)
KT-474 / SAR444656(IRAK4・HS/AD)

対象:化膿性汗腺炎(HS)、アトピー性皮膚炎(AD)

作用:IRAK4 分解により IL-1R/TLR シグナルカスケードを広く抑制

進捗:中間レビューを経て HS/AD いずれも Phase 2b 用量設定試験へ拡大。
体制:Sanofi が開発・商業化を主導、Kymera はマイルストン+ロイヤルティを受領。
次読出し:2026–2027年に主要 P2b データ readout 見込み。

前臨床(IND-enabling)
KT-579(IRF5・自己免疫)

対象:SLE、炎症性腸疾患など Type I IFN /炎症性サイトカイン駆動の自己免疫疾患

作用:IRF5 デグレーダー(first-in-class 経口)として IFN/サイトカインカスケードを制御

進捗:前臨床で強力な IRF5 分解とサイトカイン抑制を確認(ACR 2025 でデータ提示)。
FIH 計画:2026年に First-in-Human(Phase 1)開始を目標。

KT-621/IRAK4 に続く第3の免疫柱として位置づけ

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
KT-621(STAT6 デグレーダー) 中等〜重度 AD、喘息、将来的に CRSwNP/EoE/CSU/PN など Type2 疾患 Phase 2(AD P2b 進行中/喘息 P2b 準備) AD:用量設定 P2b(BROADEN2)→ Phase 3 前提設計
喘息:BREADTH P2b で用量・集団最適化
Type2 経路抑制に伴う感染症リスク、好酸球変動、肝酵素・心電図などを重点監視(現時点ではプラセボ類似プロファイル)。 経口 1日1回を想定。バイオ(Dupixent 等)からのステップダウン/前段階としての単剤使用+将来的な併用も検討余地。 特大:AD+喘息+その他 Type2 疾患で数兆円規模のポテンシャル。 「Dupixent 級の効果を経口で」を掲げる主力資産。P1/P1b データは市場から高評価で、
2027年Q2 P2b readoutがバリュエーションの最大カタリスト。
KT-474 / SAR444656(IRAK4 デグレーダー) HS(化膿性汗腺炎)、アトピー性皮膚炎(AD) Phase 2b(Sanofi 主導) HS/AD ともに用量設定 P2b → 成功時に Phase 3 へブリッジ。 IL-1R/TLR 軸抑制に伴う感染症、好中球・リンパ球変動、肝酵素などを重点監視。 経口単剤での寛解導入・維持を狙い、将来的には生物学的製剤や JAK 阻害薬との併用も検討余地。 大:HS/AD いずれも既存治療の未充足が大きく、ブロックバスター級の余地。 開発・販売は Sanofi が担う外部ドライバー。
Kymera にとっては非希薄化ロイヤルティ+マイルストンを生む「外付けコールオプション」。
KT-579(IRF5 デグレーダー) SLE、炎症性腸疾患、その他自己免疫疾患 前臨床(IND-enabling) 2026年に First-in-Human(Phase 1)開始を計画。健常人 SAD/MAD → 患者 PoC へ。 IFN シグナル抑制に伴う感染症リスク、血液学的イベント、肝酵素・中枢症状などを想定し前臨床で精査。 経口単剤での寛解誘導/維持を狙い、標準治療(ステロイド、DMARD、生物学的製剤)からのステロイドスパリング戦略を想定。 大:SLE・IBD など高額・慢性治療市場。 STAT6/IRAK4 に続く第3の免疫の柱候補。PoC 取得でプラットフォーム評価が一段階上がる可能性。
KT-485(次世代 IRAK4 デグレーダー) IRAK4 ドリブン免疫疾患(HS/AD 以外の適応拡張も視野) Phase 1 相当(Sanofi パイプライン内の早期臨床) Sanofi が前臨床〜早期臨床を主導し、KT-474 のバックアップ/補完として位置づけ。 IRAK4 クラス共通の感染症・血液・肝酵素 AESI を継続監視。 経口想定。KT-474 との差別化(PK/PD・安全性)を活かし、適応ごとの最適分子を選択。 大:IRAK4 軸全体として HS/AD 以外にも多くの自己炎症性疾患に拡張余地。 Sanofi ポートフォリオ内での最適化に左右されるが、成功時には Kymera のロイヤルティベースが厚くなるアップサイド。
腫瘍領域 TPD プログラム(KT-333 / KT-253 / KT-413 ほか) STAT3 高発現リンパ腫、p53 野生型血液腫瘍、DLBCL など 早期 Phase 1 / 前臨床 適応探索型 P1(安全性・初期有効性)+ Gilead との共同研究による CDK2 など新規腫瘍ターゲット開発。 オンコロジー TPD クラス共通の血液毒性、消化器症状、肝酵素/心電図変化など。 経口デグレーダーとして単剤+標準治療/免疫療法との併用戦略を探索。 大:がん全体の未充足ニーズは依然大きいが、競争も激しい領域。 現在は非コア領域として R&D のオプション価値的位置づけ。成功すれば Gilead 提携を含めたアップサイドだが、当面のバリュードライバーは免疫パイプライン。

ポイント
  • 戦略転換:オンコロジーでの TPD 実験フェーズを経て、現在はType2炎症・自己免疫ど真ん中にフォーカス。KT-621 を軸に免疫パイプラインへ舵を切った。
  • 3本柱の免疫群:経口 STAT6(KT-621)、Sanofi 提携 IRAK4(KT-474/KT-485)、経口 IRF5(KT-579)という「炎症・自己免疫 3本柱」で中長期のポートフォリオを構築。
  • パートナーシップ:Sanofi による HS/AD の開発・商業化とロイヤルティ、Gilead との腫瘍領域 TPD 共同研究など、外部資本を活かした拡張戦略。
  • 財務余力:2025年12月の約$602M 公募増資により、KT-621 P2b/3 と KT-579 FIH までを十分に回せるキャッシュランウェイを確保。

ファンドのポジション

主要バイオ専門ファンドや大手機関投資家の保有状況・増減から、KT-621 を中核とした「Type2炎症プラットフォーム」への期待度合い、Sanofi/Gilead 提携を織り込んだ中長期スタンスなどを評価する余地あり。

開発ロードマップ
完了:2025年Q2

KT-621 Phase 1(健常人 SAD/MAD)主要結果

6.25mg 以上の単回投与で >90% STAT6 分解、50mg 以上で血液・皮膚ほぼ完全分解。Th2 バイオマーカー低下は Dupixent クラス、忍容性も良好。

完了:2025年Q4

KT-621 BroADen Phase 1b(AD)ポジティブ readout

AD スコア・患者報告アウトカム・合併喘息/AR に有望な改善を示し、AD 向け Fast Track 指定を取得。KT-621 を中心とする免疫ピボットを強く後押し。

2026年Q1

BREADTH(喘息)Phase 2b 開始

Type2 呼吸器領域への展開として、喘息患者での用量設定 P2b を開始予定。AD データと合わせたクロスインジケーション戦略が鍵。

2026年

KT-579 First-in-Human(Phase 1)開始

IRF5 デグレーダーの FIH を開始し、健常人 SAD/MAD → 患者 PoC へ。STAT6/IRAK4 に続く第3の免疫柱としてのポジションを探る。

2027年Q2〜

KT-621 BROADEN2(AD)P2b 主要データ → レジストレーション戦略

中等〜重度 AD での EASI/IGA/痒みスコア+安全性所見に基づき、Phase 3 デザイン(単一/複数試験)とラベリング戦略を確定。喘息 P2b と合わせた Type2 疾患全体のロードマップ更新フェーズ。

注目すべきカタリスト
短期(〜2026年末)
・2026年Q1:BREADTH(喘息)Phase 2b 開始
・2026年:KT-579 FIH 開始(IRF5 デグレーダーの臨床入り)
・Sanofi による KT-474/SAR444656 HS/AD Phase 2b の進捗アップデート

中期(2026〜2027年)
・2026〜2027年:KT-474/SAR444656 P2b 主要データ → Phase 3 Go/No-Go 判定
・2027年Q2前後:KT-621 BROADEN2(AD)P2b 主要 readout(「Dupixent級+経口」ストーリーの検証)

長期(2027年〜)
・KT-621 AD/喘息 での Phase 3 着手と Type2 疾患への面展開(CRSwNP/EoE/CSU/PN 等)
・KT-579 の PoC 結果 → 自己免疫領域でのレジストレーション戦略確立
・オンコロジー TPD / Gilead 提携プログラムからの初期臨床データ(オプション的アップサイド)