ALNY のブレイクポイント
ALNY が “本格リレーティング” したブレイクは2024年に複数の確証が重なったことが起点です。
「心血管(高血圧)での実力証明」、「TTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)での承認パスが現実化」、「売上ガイダンスの上方修正」=事業の地力の3点が株価ドライバーでした。
何が株価を駆動したか(2024年の“決め手”)?
・高血圧RNAi「zilebesiran」Phase 2の強い同日持続効果がJAMAに掲載(2/16/2024)
KARDIA-1で単回皮下注で6か月持続する降圧を示し、“希少→メジャー”への拡張の現実味を投資家に印象づけ。RNAiが大市場で通用する絵が明確になりました。
・Q2’24 決算でTTRビジネスが想定超の伸長→通期ガイダンス上方修正(8/1/2024)
四半期売上$410M(前年比+34%)。TTR製品の牽引で通期売上見通しを上方修正し、商業基盤の強さが再評価されました。
・vutrisiran(AMVUTTRA)のATTR-CM sNDAがFDAに受理、PDUFAが2025/3/23に設定(11/25/2024)
HELIOS-Bの好結果を梃子に心アミロイドーシスへの本格ラベル拡大が視野に。PDUFA日程が見えたことで“承認→大型化”のカタリストが時間軸に乗りました。
※その後の事実として、2025/3/20 にATTR-CMで実際に米国承認→株価はさらに上乗せ。ここは2024年に織り込みが始まった領域です。
2024年ブレイクの背景にある“物語”
・「希少×RNAi」から「メジャー疾患×RNAi」へ
高血圧という超大市場で半年持続の降圧が示されたことで、投資家の TAM(到達可能市場)前提が拡張。さらに Roche との共同開発・共同販売体制(米国でコプロ)により、上市力の担保も評価されやすくなりました。
・TTRフランチャイズの “二段ロケット”
既存の PN(神経)に加え CM(心)での承認パスが現実化し、製品ライフサイクルと対象患者の大幅拡大が見えた。売上ガイダンス上振れがその裏づけ。
タイムライン(2024年の株価ドライバー)
2024/2/16:
KARDIA-1(zilebesiran)JAMAオンライン掲載=半年持続降圧を査読誌で確認。
2024/8/1:
Q2’24決算=$410M・+34%、通期ガイダンス引き上げ。
2024/11/25:
AMVUTTRA ATTR-CM sNDA 受理、PDUFA 2025/3/23が確定。
その後の “正解” で裏打ち
2025/3/20:
ATTR-CM 承認でTTRの大型化が現実に(株価の上振れ要因)。
2025/7/1:
KARDIA-2(併用試験)もJAMA掲載=併用下での降圧一貫性を追加確認。P3(ZENITH)着手へ。
勝ち筋
AMVUTTRA 承認 “だけ” ではなく、TTRフランチャイズの拡張+ “メジャー疾患” へのRNAi展開+商業実行の三点セットが勝ち筋です。AMVUTTRA(vutrisiran)はその起爆剤でした。
・TTRフランチャイズの二段ロケット
– AMVUTTRAの承認→ATTR-CMへのラベル拡大で患者裾野が一気に広がった。
– 皮下・少回投与・高ノックダウンという製品特性が、既存治療(例:タファミディス)からのスイッチ/併用の物語を作りやすかった。
– 実ワールドでの採用加速→売上ガイダンス上振れが株価へ素直に反映。
・RNAi が “希少からメジャー” へ
– zilebesiran(高血圧)のP2成績とP3/CVOT始動で、RNAiが超大市場でも通用する期待値が上がった(半年持続の降圧=服薬負担の劇的低減という差別化)。
– Rocheとの共同で上市力・グローバル展開の信頼性も補強。
・商業実行と収益基盤
– 複数製品のコマーシャル実績(AMVUTTRA/ONPATTRO/GIVLAARI/OXLUMO)+inclisiranロイヤルティで、R&Dを回すキャッシュ創出エンジンを確立。
– GalNAcデリバリーの再現性を背景に、次世代(nucresiran)や中枢・代謝パイプへ横展開できる “会社としての継続力” が評価。
承認済み製品:あり(TTR/レア疾患フランチャイズ)
主力:AMVUTTRA®(vutrisiran)— ATTR-CM を含む TTR アミロイドーシス。米国:2025年3月承認/EU:2025年6月9日承認。Q2’25 時点で ATTR-CM 患者約1,400人が治療中、TTR関連売上 $544M(YoY+77%)。
補足:ONPATTRO®(patisiran, hATTR-PN)、GIVLAARI®(givosiran, AHP)、OXLUMO®(lumasiran, PH1)。LEQVIO®(inclisiran)は Novartis 販売に対するロイヤルティ。
対象:心アミロイドーシス(ATTR-CM)
作用:次世代 TTR 遺伝子サイレンシング(皮下投与)
対象:高血圧(併用下の降圧持続を検証)
作用:肝臓で AGT を siRNA によりサイレンシング
対象:アルツハイマー病/脳アミロイドアンギオパチー関連
作用:中枢で APP 経路を低減し Aβ 生成を抑制
パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
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AMVUTTRA(vutrisiran) | ATTR-PN / ATTR-CM | 上市(ATTR-CM は 2025年承認拡大) | 追加適応の RWE 蓄積・地域拡大 | 皮下投与に伴う注射部位反応等を監視 | 皮下投与。タファミディス等の併用実装を検討 | 大:心不全領域で拡大余地 | Q2’25 時点で患者約1,400・売上 $544M。採用曲線が成長ドライバー |
Nucresiran(ALN-TTRsc04) | ATTR-CM | Phase 3(TRITON-CM) | 臨床イベント/機能指標中心の確証設計 | 皮下 siRNA クラス相当の安全性管理 | 皮下。既存治療との併用/切替の最適化 | 大:TTR 心アミロイドーシス | 次世代 TTR の本命。TRITON の運営進捗が評価の鍵 |
Zilebesiran(ALN-AGT) | 高血圧(併用下) | Phase 2(KARDIA-3)→ Phase 3 開始 | CVOT「ZENITH」開始(イベント駆動型) | 降圧過多/腎関連などのクラス AESI を監視 | 皮下。RAAS 阻害薬など標準治療との併用前提 | 特大:高血圧メジャー市場 | 2025年Q4 KARDIA-3→2025年Q4 CVOT開始で大型化の現実味 |
Mivelsiran(中枢 siRNA) | アルツハイマー/CAA | Phase 1 | バイオマーカー中心の初期 PoC | 中枢投与/全身安全性の長期確認 | 反復投与レジメン。Aβ低下の持続を検証 | 特大:神経変性 | 長期安全性と CSF 指標の一貫性が次段階のカギ |
Rapirosiran(ALN-HSD) | MASH | Phase 2 | 代謝指標→組織/画像へのブリッジ | 肝関連 AESI を中心に監視 | 皮下。標準治療との併用余地 | 大:脂肪肝/代謝 | 初期 PD→疾患関連エンドポイントへの接続速度が焦点 |
ALN-4324 | 2 型糖尿病 | Phase 1(2025年開始) | 安全性/初期 PD(代謝) | 代謝系 AESI を監視 | 皮下。既存経口薬との併用最適化 | 特大:糖尿病 | 大市場での siRNA 位置づけ探りの先鋒 |
- TTRフランチャイズの拡大型KPI:ATTR-CM の新規開始・継続率・併用実装が来期以降の売上見通しを規定。
- 心血管のメジャー化:Zilebesiran は 2025年Q4 の KARDIA-3 → 同 Q の CVOT 開始で大型適応に本格進出。
- 次の柱:Nucresiran(TTR 次世代)と中枢/代謝(Mivelsiran、ALN-4324、Rapirosiran)の進展が 2026年以降の成長ドライバー。
- 事業基盤:多製品の商用収益+ inclisiran ロイヤルティで投資余地を確保。
AMVUTTRA ATTR-CM 欧州承認
EU で 2025/6/9 承認。米国は 2025年3月に承認済み。
Zilebesiran KARDIA-3 トップライン
併用下の降圧一貫性を確認し、P3/CVOT 体制へ橋渡し。
Zilebesiran CVOT「ZENITH」開始
10/1 に初回投与。イベント駆動で長期運営(Roche 共同)。
Nucresiran TRITON-CM 進捗
組入・中間運営アップデート、確証データへ前進。
Zilebesiran KARDIA-3 トップライン、CVOT 開始、AMVUTTRA の上市拡大 KPI
Nucresiran(TRITON-CM)運営アップデート、Mivelsiran 長期フォロー解析、Rapirosiran/ALN-4324 の進捗
TRITON-CM 確証データ、心血管 CVOT の初期運営マイルストン、代謝/中枢パイプの拡大