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【ACIU】AC Immune カタリストとロードマップ

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ハイライト

2025年12月11日:Phase 2 VacSYn 試験中間解析で、抗αシヌワクチン ACI-7104.056PD 進行を鈍化しうる初の能動免疫候補となる可能性を示唆(MDS-UPDRS III の悪化抑制、CSF αシヌ/NfL 安定化)。

2025年9月4日:パイプラインを再編し、3つの能動免疫ワクチン(Aβ / pTau / αシヌ)+ NLRP3/Tau スモール分子+TDP-43/αシヌ PET に集中投資する「絞り込み」戦略を発表。キャッシュランウェイを2027年Q1まで延長。

2024年12月10日:抗Aβワクチン ACI-24.060 の Down症成人コホートでSAE ゼロ・ARIA ゼロの中間安全性データを報告し、高用量コホートへ移行。

2024年:タケダと ACI-24.060 に関する独占オプション&ライセンス契約を締結(Upfront 1億ドル+最大約21億ドルのマイルストン)。ACI-24.060 はプロドローマル AD / DS-AD 予防を狙う中核資産に。

2024年:抗pTauワクチン ACI-35.030(JNJ-2056) が Phase 2b ReTain 試験で迅速なプリスクリーン進捗を達成し、Janssen から約2,460万CHFのマイルストン受領。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:ACI-24.060(抗Aβ能動免疫ワクチン)— プロドローマル AD および Down症成人における AD 予防を狙う Phase 1b/2 プログラム。タケダが全世界オプション権を保有。

補足:ACI-7104.056(抗αシヌワクチン・PD Phase 2)、ACI-35.030/JNJ-2056(抗pTauワクチン・プレクリニカル AD Phase 2b)、NLRP3/Tau/αシヌ向け Morphomer® スモール分子、TDP-43/αシヌ PET トレーサー群が続く。

主要臨床成績
2025 Q4
ACI-7104.056 VacSYn 試験 中間解析:PD 運動症状悪化の抑制と CSF αシヌ/NfL 安定化を確認

2025 Q4
TDP-43 PET および ACI-15916(αシヌ PET)Phase 1 初回 readout 目安(遺伝性 FTD / PD 患者での集積パターン)

2026 Q2
ACI-24.060 ABATE 試験 AD/DS コホートの中間データ(Aβ PET・免疫原性・初期認知機能)

2026 Q2–Q3
ACI-7104.056 VacSYn Part 1(最大74週フォロー)最終データ readout 予定

臨床試験パイプライン
Phase 1b/2
ACI-24.060(抗Aβワクチン・ABATE)

対象:プロドローマル AD(MCI due to AD)および Down症成人(DS-AD 予防)

作用:Aβ を標的とする能動免疫(SupraAntigen®)。脳内アミロイドの除去と蓄積抑制を狙う。

進捗:AD コホートで安全性・免疫原性良好。DS コホートでは SAE・ARIA なしの中間データを踏まえ高用量コホートへ移行。
安全性/PD:これまでの解析で薬剤関連の ARIA 報告なし。血液・CSF 中の抗体価上昇と Aβ PET 改善シグナルを探索中。
次読出し:2026 Q2 目安:AD/DS 両コホートの中間データ更新とタケダの次ステップ示唆。

Phase 2
ACI-7104.056(VacSYn・パーキンソン病)

対象:早期パーキンソン病患者(de novo〜初期 PD)

作用:αシヌクレインを標的とする能動免疫ワクチン。異常αシヌ蓄積と神経変性進行の抑制を狙う。

進捗:VacSYn Phase 2 で中間解析完了。治療群は MDS-UPDRS Part III がほぼ安定、プラセボは悪化。
安全性/PD:薬剤関連の重篤/重度 AE なし。CSF αシヌ・NfL の安定化、DaT-SPECT・GFAP でも病勢安定を示唆。
次読出し:2026 Q2–Q3:Part 1 最終データ readout → 規制当局とのレジストレーション戦略協議。

Phase 2b
ACI-35.030 / JNJ-2056(抗pTauワクチン・ReTain)

対象:プレクリニカル AD(症状前 AD、高リスク群)

作用:pTau を標的とする能動免疫。タウ病理の進展を抑制し、認知機能低下の予防を狙う。

進捗:長期フォロー(約4年)の Phase 2b ReTain 試験を実施中。プリスクリーンが想定を上回るペースで進行し、Janssen からマイルストン受領。
安全性/PD:初期コホートで良好な免疫原性と安全性プロファイルを確認。CSF タウ・PET を含むバイオマーカー readout を計画。
次読出し:2027年以降:バイオマーカー中間データ → 臨床エンドポイント readout。

Phase 1
TDP-43 PET トレーサー

対象:遺伝性前頭側頭型認知症(FTD)など TDP-43 病理を持つ患者+健常ボランティア

作用:TDP-43 病理の in vivo 可視化を目的とした PET トレーサー。Precision trial デザインの基盤。

進捗:Phase 1 で安全性・脳内集積パターン・ターゲット結合を評価中。
初回データ:2025 Q4 目安:初回 Phase 1 readout(集積差と安全性)。

Phase 1
ACI-15916(αシヌ PET)

対象:パーキンソン病・シヌクレイノパチー患者

作用:αシヌ病理の分布を可視化する PET トレーサー。ACI-7104.056 を含む PD 治療薬の患者選択とレスポンス評価に活用。

進捗:PD 患者で安全性・集積パターンを評価中。
初回データ:2025 Q4〜2026 Q1:Phase 1 データ readout 予定。

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
ACI-24.060(抗Aβワクチン) プロドローマル AD、Down症成人(DS-AD 予防) Phase 1b/2 適応探索型 P1b/2(AD+DS コホート)。AD で FDA Fast Track 指定。 クラス留意:ARIA(脳浮腫・微小出血)、注射部位反応、インフルエンザ様症状。現時点で DS コホートに ARIA 報告なし。 皮下投与スケジュール(ワクチン)。将来は抗体点滴薬とのシーケンス/併用も検討余地。 大:AD 予防・早期治療市場。 タケダが全世界オプション権を保有する中核資産。2026 Q2 の ABATE データがバリュー再評価の鍵。
ACI-7104.056(抗αシヌワクチン) 早期パーキンソン病 Phase 2 レジストレーションを見据えた Phase 2(VacSYn)。Part 1 データを踏まえ Phase 2b/3 設計へ。 クラス留意:免疫関連事象、注射部位反応、神経症状の悪化。中間解析で重篤薬剤関連 AE のシグナルなし。 皮下投与ワクチン。将来的には L-dopa/DOPA 補助薬、MAO-B 阻害薬などとの併用が標準になる可能性。 中〜大:PD 疾患修飾領域。 PD 進行鈍化を示す初の能動免疫候補として、2026年の最終データ次第で大きな re-rating 余地。
ACI-35.030 / JNJ-2056(抗pTauワクチン) プレクリニカル AD(症状前・高リスク群) Phase 2b 長期予防型 P2b(ReTain)。Fast Track 指定取得。 注射部位反応、発熱、頭痛などワクチン由来 AESI を中心に監視。初期データで重大な安全性シグナルなし。 皮下投与ワクチン。将来は Aβ ワクチン(ACI-24.060)とのデュアル予防レジメンも検討。 大:プレクリニカル AD 予防という新市場。 極めて長期の試験設計。中間のバイオマーカー readout と、Aβ ワクチンとの組み合わせ戦略が注目ポイント。
ACI-19764(NLRP3 阻害薬) AD / PD / ALS など NLRP3 駆動 CNS 疾患 前臨床 2026年の IND 提出 → Phase 1(SAD/MAD)開始を目標。 クラス留意:感染リスク、肝酵素上昇、炎症マーカー変動。 経口スモール分子想定。ワクチンや他の疾患修飾薬との併用で炎症制御を補完。 中〜大:炎症性 CNS 疾患横断。 ワクチンとは別モダリティで神経炎症を叩くオプション。早期 PoC でポートフォリオ価値が上乗せ。
TDP-43 / ACI-15916(αシヌ)PET TDP-43 病理 FTD、パーキンソン病・シヌクレイノパチー Phase 1 画像診断用 PET としての P1(安全性+集積パターン)。 放射性トレーサーに伴う被ばく、アレルギー反応などを監視。 単回投与。自社・他社治療薬試験でのスクリーニング・レスポンス評価に組み込み。 中:診断・試験デザイン向けニッチ市場だが、複数試験に横展開可。 Precision trial インフラとしての価値。ポジティブ Phase 1 後はライセンスアウトや共同利用による非希薄化収入に期待。

ポイント
  • プラットフォーム戦略:SupraAntigen®(能動免疫)+ Morphomer®(スモール分子)+ PET トレーサーという 3 本柱で、AD/PD/FTD など神経変性疾患に特化。
  • 大手との強固な提携:ACI-24.060 でタケダ、ACI-35.030 で Janssen(J&J)、Morphomer Tau で Eli Lilly と提携し、開発・資金面のリスク分散を図る。
  • 財務余力:タケダからの Upfront 1億ドル+マイルストンにより、2027年Q1 までのキャッシュランウェイを確保(2025年秋時点ガイダンス)。
  • 疾患修飾「予防」ポジション:Aβ / pTau / αシヌ ワクチン+PET による Precision prevention を志向し、すでに症状が出た患者向け抗体点滴薬と住み分ける戦略。

ファンドのポジション

現状は、タケダ/J&J/Lilly との提携を材料にした神経変性バイオ特化ファンド・欧州ヘルスケアファンド・イベントドリブン勢が中心と考えられます。一方で、ACI-24.060(タケダオプション行使の有無)と ACI-7104.056(VacSYn 最終データ)の結果次第では、より大型のグローバルロングオンリーが本格的にポジションを取り始めるフェーズが来る可能性があり、そのタイミングが中期的な re-rating ポイントになり得ます。

開発ロードマップ
完了予定:2025年Q4

TDP-43 / ACI-15916 PET Phase 1 初回 readout

遺伝性 FTD・PD などでの集積パターンと安全性を確認し、Precision trial デザインの基盤データを取得。

2026年Q2

ACI-24.060 ABATE AD/DS コホート中間データ

Aβ PET、免疫原性、初期認知機能の readout。タケダによるオプション行使や Phase 3 デザイン具体化の重要な判断材料に。

2026年Q2–Q3

ACI-7104.056 VacSYn Part1 最終データ

PD 臨床指標とバイオマーカー(CSF αシヌ/NfL 等)の長期推移を評価。レジストレーションを視野に入れた Phase 2b/3 デザインを規制当局と協議。

2026年〜

ACI-19764 / Morphomer Tau 初回ヒト試験

NLRP3 阻害薬 ACI-19764 および Morphomer Tau の Phase 1(SAD/MAD)開始。経口スモール分子による疾患修飾オプションを拡充。

2027年以降

ACI-24.060 / ACI-7104.056 レジストレーション試験

ABATE・VacSYn の結果と規制当局協議を踏まえ、プロドローマル AD や早期 PD を対象とした Phase 3 あるいは P2/3 レジストレーション試験へ進むロードマップ。

注目すべきカタリスト
短期(〜2026年Q2)
・TDP-43 / ACI-15916 PET Phase 1 初回 readout(2025年Q4 前後)
・ACI-24.060 ABATE AD/DS コホート中間データ(2026年Q2)

中期(2026年Q2〜2027年)
・ACI-7104.056 VacSYn Part1 最終データとレジストレーション戦略開示
・タケダによる ACI-24.060 オプション行使の有無
・Morphomer Tau / ACI-19764 Phase 1 初回データ

長期(2027年〜)
・Aβ / pTau / αシヌ ワクチンの Phase 3 着手と、デュアル/トリプル予防レジメン構想
・PET トレーサー群のライセンスアウト・他社試験組み込みによる非希薄化収益