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【KRTX】Karuna Therapeutics のパイプラインと買収

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BMS は何を目当てに買収したのか?

・中枢神経(Neuroscience)領域の強化
BMSは公式に、Karuna買収で神経科学ポートフォリオを強化すると明言。従来のドパミン拮抗と異なる “ムスカリン作動+末梢遮断” の新機序(KarXT/COBENFY)を中核資産として獲得。

・大型製品候補の取り込み(収益ドライバー化)
当時の報道では、ピーク売上の大型化余地が注目(数十億ドル規模との見立て)。統合失調症に加え、アルツハイマー病に伴う精神症状(ADP)など適応拡大パスが明確で、成長ドライバーとして期待。

・承認前の “後期段階資産” を先取り
発表時点(2023年12月)は承認前ながら、Ph3 群の結果を背景に高確度アセットとして評価し、承認・上市キャッシュフローを早期取り込み。結果として2024年9月のFDA承認で読み筋どおりに上市へ。

・資産ポートフォリオの分散とL/E(特許満了)対応
腫瘍・免疫など既存主力に対し、精神科の新規機序薬を加えることで領域分散を進め、中期の収益ポートを底上げ。BMSのIRメッセージとも整合。

BMS は “新機序の大型CNS製品(KarXT)+適応拡大の伸びしろ” を承認前に確保し、神経科学の柱へ育成する狙いで KRTX を買収しました。買収プロセスは2023/12/22発表 → 2024/3/18クローズというスムーズな流れで、HSR満了・株主承認などの関門も期日どおりに通過しています。

ハイライト

2025年10月27日:BMS傘下のKaruna Therapeuticsとして、主力のムスカリン作動薬COBENFY™(KarXT)の適応拡大(AD精神病・併用療法)の開発を継続。
2025年4月22日:統合失調症併用療法P3(ARISE)Topline公表(主要評価未達、詳細サブ解析を継続)。
2024年9月26日:COBENFY™(KarXT)成人統合失調症米FDA承認。新機序(M1/M4作動+末梢遮断)として上市。
2024年3月18日:BMSがKaruna買収完了、KarunaはBMSの完全子会社に。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:COBENFY™(xanomeline + trospium)

適応:成人統合失調症(米国)

要点:ドパミン拮抗ではなくM1/M4ムスカリン作動末梢遮断の新機序。処方情報・HCP資材公開済み。

主要臨床成績
2024 Q3
COBENFY™(KarXT) 米FDA承認(成人統合失調症)

2025 Q2
併用P3(ARISE)Topline公表(主要評価未達)

進行中
AD精神病向けP3(ADEPT-2ほか)登録・追跡中

2026 計画
英国での展開計画(会社発表)

臨床試験パイプライン
承認済
COBENFY™(KarXT)— 統合失調症(単剤)

対象:成人統合失調症(急性期を含む)

作用:M1/M4ムスカリン作動+末梢遮断

根拠:EMERGENT群のP3で有効性・忍容性を確認
現状:米国市販後、実臨床データの蓄積を進行
展開:HCP資材更新・保険償還の拡大に注力

Phase 3(Topline済)
COBENFY™(KarXT)— 統合失調症(併用療法)

対象:既存アチピカル抗精神病薬への上乗せ

設計:ARISE P3(6週PANSS)

Topline:主要評価未達(追加サブ解析継続)
次報:学会・論文化で詳細解析の公表見込み

Phase 3
KarXT — アルツハイマー病に伴う精神症状(ADP)

対象:アルツハイマー病患者の精神症状(幻覚・妄想など)

設計:ADEPT-2 ほか並行群RCT、長期安全/再発抑制試験

進捗:登録・追跡中(CT.gov/StudyConnect掲載)
注目:主要評価の時期・長期安全の読出し

適応拡大の鍵となるポジティブ読出しに注目

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
COBENFY™(KarXT) 統合失調症(単剤) 承認済(米国) EMERGENT系P3に基づく承認 ムスカリン作動に伴う消化器/尿路・胆嚢/肝機能等を注意喚起 経口投与。用量最適化と実臨床でのポジショニング確立 大:高未充足・大市場 新機序で差別化。市販後データと償還が拡大ドライバー
COBENFY™(KarXT) 統合失調症(併用療法) Phase 3(Topline済) ARISE P3(6週PANSS)— 追加サブ解析継続 上記クラス留意+背景薬との相互作用・忍容性を評価 既存Atypicalへの上乗せ設計 中:差別化はデータ次第 一次未達だが背景薬別などで再検証余地
KarXT ADに伴う精神症状(ADP) Phase 3 ADEPT-2 ほか、長期安全/再発抑制試験を並行 高齢者集団の胆嚢/尿閉/認知・転倒リスクなどをモニタ 経口単剤。介護環境でのアドヒアランスに配慮 大:高未充足・拡大余地大 適応拡大の最大ドライバー。主要評価の読出しタイミングに注目

ポイント
  • 機序差別化:ドパミン拮抗でなくM1/M4作動+末梢遮断。錐体外路症状や代謝系の典型的副作用プロファイル差に期待。
  • 適応拡大:AD精神病(ADP)のP3が中期の価値ドライバー。併用P3はTopline未達だがサブ解析・追試で再評価の余地。
  • 商用面:米国ローンチ後の実臨床データ、償還、HCP教育が成長の鍵。UK/EU展開は2026年以降のマイルストン。

ファンドのポジション

主要ファンドや戦略投資家の動向を踏まえた見立て(例:大型製薬傘下による資金力・上市基盤、ADPのP3成否による中期バリュエーション感度、併用P3の再解析シナリオ等)を後段のアップデートで補足可能です。

開発ロードマップ
完了:2024 Q3

COBENFY™(KarXT) 米FDA承認

成人統合失調症で新機序として上市。

完了:2025 Q2

併用療法P3(ARISE)Topline

主要評価未達。詳細サブ解析・報告に向け準備。

進行中:2025〜

ADP向けP3(ADEPT-2 ほか)

並行群RCT・長期安全/再発抑制試験を進行。主要評価の読出し時期に注目。

計画:2026

UK展開

価格方針とHTA評価がマイルストン。

注目すべきカタリスト
短期(〜2025 Q4)
併用P3(ARISE)の詳細解析公表、米国での市販後データ更新・償還拡大

中期(2026〜)
ADP P3(ADEPT-2ほか)の主要評価読み出し、UK/EU展開

長期
適応拡大の成否と実臨床での定着度に応じたピーク売上更新