AstraZeneca による買収の背景
AstraZeneca による FUSN の買収は、プラットフォーム+インフラを含む狙いでの買収でした。当時の FUSN パイプラインの最先行は Ph2(FPI-2265)でした。
AstraZeneca は買収の理由を、アクチニウム225(α線)を使う放射性コンジュゲート(RC/TAT)のR&D・製造・サプライチェーン能力を取り込むためと明言しています。この背景には、カナダ拠点を含む製造・供給インフラを自社化する狙いがありました。
FT/Reuters も、Actinium 製造を含む厳しい供給管理をAZが引き継ぐ点や、AstraZeneca のRC/ADCを柱にした腫瘍戦略との整合を指摘しています。
実際のパイプライン段階(買収時点)
・FPI-2265(PSMA):Phase 2(TATCIST)。mCRPCで^177Lu後を含む設計で進行中(AZの買収完了リリースにも“Phase II”と明記)。
・FPI-1434(IGF-1R):Phase 1。
・FPI-2059(NTSR1):Phase 1。
・FPI-2068 / AZD2068(EGFR×cMET):2024年Q3にP1初回投与(FPCD)
以上のようにプラットフォーム/インフラ目的が大きい買収で、パイプラインは “最先行がPh2・他はPh1” という構成。取引条件は$21現金+最大$3のCVR(総額約$24億)で、AstraZeneca のRC領域を一気に前進させる戦略的M&Aでした。
要するに、α線RCの製造・供給を含む基盤+中核資産(Ph2)をまとめて取りにいった、という見立てが妥当です。
プラットフォーム
FUSN プラットフォーム力は強かったです。AstraZeneca(が評価したポイントは主に3つ。
1. 薬物設計:Fast-Clear™ リンカー×α線(Ac-225)
非腫瘍部位に結合しなかった放射性部分が速くクリアされる設計で、治療窓を広げる狙い。同社はα線(Actinium-225)に特化しており、従来のβ線(^177Lu)とは生物学的特性が異なる “別レイヤー” のTATを押し出していました。
2. “画像で選抜→投与”ワークフロー(イメージング類薬)
例:FPI-1434(IGF-1R)では、^111In標識の類薬(FPI-1547)で取り込み・線量を確認してから本剤(^225Ac)を投与する選抜設計。ライン化されたドシメトリ運用が同社の強みでした。
3. 供給・製造インフラ(“作れる”体制)
自社GMP製造拠点(カナダ・ハミルトン)を整備し、さらにBWXT Medical からのRa-225供給+Ac-225ジェネレーター技術で、施設内で高純度Ac-225を生成できる契約を締結。TRIUMF・Niowaveとも長期のAc-225供給協定を組み、希少アイソトープのマルチソース化を進めていました(放射薬における最大のボトルネック対策)。
加えて、臨床面の “現実味” もありました。先頭集団のFPI-2265(PSMA)はP2(TATCIST)に到達し、用量最適化→登録パートまでFDAと事前整合を取った計画を公表。AACR 2024でもレジメン(100 kBq/kgを8±1週間隔×4回)などが示され、^177Lu既治療層も視野に入る設計でした。
AstraZeneca が買収で取りに来たのは、単に「P1の種」ではなく、(a) α線TATの薬理設計、(b) 画像→治療の臨床運用、(c) 供給・製造の実装をまとめて内製化すること。AstraZeneca の公式リリースも、“次世代ラジオコンジュゲートを柱にする” という戦略的意図を明言しています。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:FPI-2265(225Ac-PSMA I&T)— mCRPC を対象。
補足:AZと共同の EGFR×cMET 二重標的(FPI-2068/AZD2068)を含むα線TAT群が Phase 1 進行中。
mCRPCで継続中
Phase 1 FPCD
8±1週間隔で4回
対象:PSMA放射薬未治療/177Lu後 いずれも含む mCRPC
投与:例:100 kBq/kg ×4回(8±1週間隔)
対象:固形腫瘍(画像類薬 FPI-1547 による取り込み選抜)
所見:初期コホートで DLT なし報告、Fast-Clear™リンカーでクリアランス最適化
対象:EGFR×cMET 共発現の固形腫瘍
設計:用量最適化→本体用量漸増(安全性/PK/初期活性)
パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
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FPI-2265(PSMA 小分子 TAT) | mCRPC(PSMA放射薬未治療/177Lu後) | Phase 2(TATCIST) | レジストレーション志向のP2。サブセット(^177Lu後)解析を計画 | α線TAT:唾液腺障害・口腔乾燥、骨髄抑制、腎機能変動に注意 | 例:100 kBq/kg ×4回(q8W)。画像/PSA/RECIST を総合評価 | 大:前立腺がん(PLUVICTO後を含む) | ^177Lu経験後の再チャレンジ枠でニーズ高。線量学と安全性プロファイルの最適化が鍵。 |
FPI-1434(IGF-1R 抗体 TAT) | 固形腫瘍(画像取り込みで選抜) | Phase 1(単剤)→併用計画 | Fast-Clear™リンカー。イメージング類薬(FPI-1547)で“画像→治療” | 放射性抗体:骨髄抑制、肝酵素・腎、放射線被ばく管理 | 単剤→pembro併用へ拡張。取り込み基準で患者選択 | 中:横断固形腫瘍 | 患者選抜×線量個別化で治療指数の最大化に挑む。 |
FPI-2059(NTSR1 小分子 TAT) | 膵・大腸・胃など NTSR1 過表現腫瘍 | Phase 1(FIH) | 画像類薬 FPI-2058 で線量設計/バイオディストリ選抜 | 小分子TAT:骨髄抑制、腎・唾液腺、消化器症状 | 用量漸増で安全性/PK/線量学を評価 | 中:適応横断の探索段階 | 消化器がん中心の選抜戦略が成否を左右。 |
FPI-2068 / AZD2068(EGFR×cMET 放射免疫複合体) | EGFR×cMET 共発現固形腫瘍 | Phase 1(2024年Q3開始) | 用量最適化→本体漸増の2部構成。初期まとまった読出しは2026年以降 | 放射性抗体:骨髄抑制、肝・腎、被ばく管理 | バスケット設計。画像・組織の発現で層別化 | 大:EGFR/cMET 依存腫瘍群 | AZ買収により製造・商業化基盤を確保。二重標的で取り込み増強を狙う。 |
Fusion は 2024年6月に AstraZeneca が買収完了。α線(225Ac)TAT の製造キャパシティ確保とグローバル開発力の強化が前提化。FPI-2265 は P2(TATCIST)で ^177Lu 既治療層のアンメットにフォーカス、FPI-1434/2059 は画像類薬での選抜を活かした“画像→治療”運用が差別化要素。AZD2068 は2024年Q3開始の P1 で、初期まとまったデータは2026年以降が目安。
AstraZeneca×Fusion 戦略提携を発表
α線TATの共同開発を開始。AZ抗体×Fusionの225Ac結合技術で複数資産を推進(前臨床〜初期臨床はFusion、以降はAZ主導)。
FPI-2068 / 画像類薬の IND クリア
EGFR×cMET 二重標的の放射免疫複合体 FPI-2068 と画像類薬 FPI-2107 が IND 受理。Phase 1 開始準備へ。
前臨床データを学会発表(AACR–NCI–EORTC)
FPI-2068 の機序・抗腫瘍活性など前臨床ポスターを公開。二重標的化による取り込み強化のコンセプトを補強。
AstraZeneca が買収発表(3/18 合意)
条件:1株 $21 現金+CVR 最大 $3、取引総額約 $24 億。目的はTAT/RCの加速と製造能力の内製化。
買収クローズ(Fusion が AstraZeneca 子会社化)
買収完了により Fusion は AstraZeneca の完全子会社へ。Nasdaq 上場は廃止、開発・製造体制を一体化。
AZD2068(FPI-2068) Phase 1 FPCD
EGFR×cMET 二重標的の放射免疫複合体が初回被験者投与に到達(AZ共同)。
AZD2068(FPI-2068) Phase 1 FPCD
EGFR×cMET 二重標的の放射免疫複合体が初回被験者投与に到達(AZ共同)。
FPI-2265 / FPI-1434 / FPI-2059 アップデート
2265:TATCIST の継続データ(^177Lu後/未治療層の解析)。1434:単剤P1とpembro併用の進捗。2059:FIH の安全性/線量学を更新。
AZD2068 初期結果レンジ & 2265 次相整備
AZD2068 の初期まとめ結果レンジ。2265 は当局協議に応じレジストレーション段階の次相整備を想定。