IMTX は、2020年に SPAC 上場しました。2024年9月以降に株価が大幅に下落しているのは、2024年9月に BMS(ブリストル)がポートフォリオ再優先化の一環で共同案件を外し、IMTX が二重特異TCR候補「IMA401」の開発・販売権を全面回復しました。
材料自体は中立〜ややポジ(主導権回復)ですが、「大手が手を引いた」印象は投資家にとってはマイナスに映りました。更に2024年10月10日には、1.5億ドルの公募増資を発表(のちにプライシング確定)。
希薄化・需給悪化で株価に下押し圧力がかかる典型パターンです。そのままトランプ再選によるバイオセクターの不確実性に入りました。
Moderna と戦略的提携
IMTX は、2023年9月11日に Moderna と戦略的提携を結んでいます。Immatics のTCR/標的探索プラットフォームと、Moderna のmRNA技術を組み合わせ、TCER(二重特異TCR)※mRNAで体内発現、細胞療法、がんワクチンなど複数モダリティで共同研究・開発。
Immaticsは1.2億ドルの前払い+最大約17〜18億ドル規模のマイルストンおよびロイヤルティの可能性があります。要するに、IMTX × Moderna はがん領域での “マルチプラットフォーム提携” で、mRNAを活かした体内でのTCR二重特異分子の発現などが注目点です。
IMA203(anzu-cel)フェーズ3の位置づけ
グローバル無作為化・実薬対照のフェーズ3「SUPRAME(NCT06743126)」が進行中。対象は既治療の切除不能/転移性皮膚悪性黒色腫、HLA-A*02:01陽性患者。一次評価項目はBICR(RECIST 1.1)によるPFS。
フェーズ1/1bではメラノーマで奏効率50%超など前向きシグナルが報告済み(RP2D群でのデータ)。
・注目ポイントとリスク
注目ポイント : 初のTCR-Tがメラノーマで承認に迫る可能性(対照群=医師選択治療)。フェーズ1/1bの有効性シグナルとPFS一次で設計が明確。既にTIL製剤(lifileucel/Amtagvi)が2024年に加速承認され、市場が「個別化細胞療法」を受け入れ始めた土壌がある。
リスク : HLA-A*02:01+PRAME陽性という選択基準で対象母集団が限定。製造・物流(オートログス)と前処置(リンパ球除去+低用量IL-2)の運用負荷。競合は TIL(lifileucel)や既存薬のレジメン最適化。PFS優越が十分でないと規制面で苦戦の恐れ。
自家細胞製品の難しさ
・IOVA(Amtagvi/TIL)の実情
競合である IOVA の「Amtagvi」は、2024年2月に加速承認(既治療の切除不能/転移性黒色腫)。WACは51.5万ドル。立ち上がりは想定より鈍く、コスト高・現場オペ負荷も響き、25年8月に人員削減(約19%)などテコ入れを発表。
会社側は中長期で粗利改善を見込むが、現時点は収益化に苦戦が続くトーン。TIL は腫瘍片の外科採取→長期培養が前提で、患者動線・手術室・物流のハードルが高い(中央工場 iCTC での大規模製造・QCがボトルネックになりやすい)。
・IMTX(IMA203/TCR-T)の製造運用
末梢血アフェレーシスのみで腫瘍摘出が不要。TILに比べ前工程の負荷が低い(患者スケジューリング面で優位)。また、製造7日+QC7日(合計およそ2週間)、目標用量到達の成功率>95%と説明(後工程の放出試験込み)。
リードタイム短縮は在庫(WIP)とサイト滞留の圧縮=COGS/稼働率にプラス。商用供給に向けた自社GMP工場を整備中(既存GMPに加え新拠点を2025年に稼働開始見込み、PRで言及)。Ph3(SUPRAME)を走らせつつ、商用キャパの立上げを並行している。
・とはいえ残るリスク
自家製品の宿命として、前処置(リンパ球除去)や入院運用、ベクター供給・試薬、QC放出、治験→商用への製造 “比較性” など、量産移行の壁は IMTX も回避できません。Ph3後半〜承認準備段階でサイト拡張と運用標準化が最大の実務リスク。
黒色腫領域は既に TIL(Amtagvi)が存在。臨床上の差別化(PFS一次の Ph3 での優越、運用容易性、供給安定)を実データ&実行で示せるかが商用化のカギ。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:IMA203(anzu-cel, ACTengine® 自家TCR-T, PRAME標的)— 皮膚メラノーマを対象、Phase 3(SUPRAME) 進行中。
補足:第二世代の IMA203CD8(Phase 1a)、バイスペシフィックの TCER®:IMA402(PRAME, Phase 1a)/ IMA401(MAGEA4/8, Phase 1a)、および IMA203+Moderna PRAME mRNA(Phase 1, IND取得済) を展開。
SUPRAME 開始:2025年
BLA 提出目標
ランウェイ:〜2027年下期
Phase 1 データ更新予定
対象:PRAME陽性 切除不能/転移性皮膚メラノーマ
設計:無作為化比較の確証試験。2026年エンロール完了目標。
対象:固形腫瘍(卵巣がん等を含む)
所見:CD8共受容体導入でTCR活性を強化。用量漸増と腫瘍種別拡張を実施中。
IMA402(PRAME, TCER®):固形腫瘍向け Phase 1a 実施中。
IMA401(MAGEA4/8, TCER®):頭頸部がん等で Phase 1a 実施中(チェックポイント併用)。
パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
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IMA203(anzu-cel, ACTengine®, PRAME) | PRAME陽性 皮膚メラノーマ(HLA-A*02:01) | Phase 3(SUPRAME) |
無作為化・実薬対照(医師選択治療) 主要評価:PFS(BICR, RECIST 1.1) 副次:ORR/DoR/OS/QoL 等 |
CRS、ICANS(神経毒性)、発熱性好中球減少、 造血遅延/感染症、肝酵素上昇(化学療法前処置含む) |
単回静注(自家TCR-T) リンパ球除去:フルダラビン/シクロホスファミド 低用量IL-2 サポート(施設プロトコルに準拠) 併用:現時点は単剤の確証設計(将来ICI等検討余地) |
大:メラノーマの確証試験市場 |
2026年 登録完了目標、Q1 2027 BLA目標。 PRAMEは発現頻度が高く商業性期待も、適格基準が限定的。 製造キャパ拡充がカギ。 |
IMA203CD8(GEN2, ACTengine®, PRAME) | PRAME陽性 固形腫瘍(卵巣がん等の拡張) | Phase 1a(用量漸増/腫瘍横断) |
単群オープンラベル(安全性/初期有効性) 主要評価:DLT/安全性、推奨用量決定(RP2D) |
CRS、ICANS、骨髄抑制/感染症 等(TCR-Tクラスエフェクト) |
単回静注(自家)+標準的リンパ球除去 次世代設計(CD8共発現)で腫瘍浸潤/活性の最適化狙い 併用:将来的にICI/低用量IL-2など評価余地 |
中:適応拡張余地・腫瘍横断バスケット |
Q4 2025 データ更新予定。 GEN2で持続性/深い奏効の上積み示唆があれば価値再評価。 |
IMA402(PRAME, TCER®) / IMA401(MAGEA4/8, TCER®) + IMA203 × Moderna PRAME mRNA(併用/新規モダリティ) |
固形腫瘍(頭頸部がん等)/ PRAME陽性腫瘍 | Phase 1a(IMA402/401) / 早期臨床準備(mRNA併用) |
早期用量漸増・ステップアップ投与設計(バイスペシフィック) 初期PK/PDと初期奏効指標の探索 |
サイトカイン関連事象(CRS様)、注入反応、 肝酵素上昇、オンターゲット・オフトゥーマー管理 |
TCER®は反復静注(ステップアップ/入院監視を含む施設運用) mRNA併用:体内発現/プライミングで活性強化を狙う |
中〜大:オフ・ザ・シェルフ/反復投与型免疫療法 |
Q4 2025 に IMA402/401の更新見込み。 Moderna連携は“mRNA×TCR”で拡張性が高く戦略的に注目。 |
PRAME 中心戦略で、自家 TCR-T(anzu-cel)を軸に確証試験(P3)を推進。
TCER® によりオフ・ザ・シェルフ化と併用展開を並行。
資金余力:現金等 €543.8M(2025/3/31)、ランウェイは〜2027年下期を見込む。
ASCO:IMA203 P1b 長期データ
皮膚/眼メラノーマの耐久性・追跡データを口頭/ポスターで提示。
初期臨床の更新
IMA203CD8 / IMA402 / IMA401 の P1 データアップデート。
SUPRAME(P3) 登録完了目標
anzu-cel のエンロール完了を目指し、解析準備へ移行。
anzu-cel BLA 提出
商業承認に向けた申請。製造体制は順次増強。
適応拡大とプラットフォーム展開
PRAME以外の標的や併用療法へ展開、TCER® の適応拡張を加速。
ASCO での IMA203 P1b 長期/耐久性データ。
IMA203CD8 / IMA402 / IMA401 の P1 更新、Moderna 併用の進捗。
P3 登録完了 → Q1 2027 BLA 提出へ。