バイオ企業の資金調達の流れ

大学・研究所・大手製薬から技術導入
↓
Seed/創業資金
↓
Series A
候補薬選定・IND準備・Phase 1
↓
Series B
Phase 1完了・患者PoC・Phase 2
↓
Series C/D
Phase 2拡大・Phase 3準備・IPO準備
↓
Crossover financing
上場投資家が未上場段階で参加
↓
IPO
Phase 2/Phase 3・製造・承認準備
↓
公募・PIPE・ATM・提携・借入
↓
Phase 3 → NDA/BLA → 承認・上市
↓
自社商業化/大手製薬会社による買収
FDAの医薬品開発プロセス自体も、前臨床、Phase 1、Phase 2、Phase 3、承認審査という順番です。そのため、バイオ企業の各資金調達は、基本的にこの開発段階と対応します。
1. 会社設立前:大学・研究所・大手製薬から技術を取り出す
最初の段階では、まだ会社が存在しないケースもあります。典型的には、
・大学で発見された標的や抗体
・大手製薬会社が優先順位を下げた開発資産
・中国・日本・欧州の製薬会社が保有する地域外権利
・バイオファンドが研究者と共同で設計した新会社
・既存企業から切り出されたプラットフォーム
などをもとに会社を作ります。この段階で中心になるのが、
・創業科学者
・Entrepreneur in Residence
・インキュベーター
・ベンチャーキャピタル
・大学の技術移転部門
・疾患財団
・製薬会社のベンチャー部門
です。例えば BRVE のように、ファンドが海外製薬会社から後期資産を導入して会社を設立するケースもあれば、LTGO のように専門VCが会社をインキュベートするケースもあります。
2. Seed/Pre-seed:会社を作り、薬の候補を絞る
シード資金では通常、次の作業を行います。
・会社設立
・知的財産の取得
・大学・製薬会社とのライセンス契約
・CEO、CSOなど初期経営陣の採用
・創薬候補のスクリーニング
・動物試験
・製造方法の初期検討
・開発候補薬の選定
金額は会社によって大きく異なりますが、数百万ドルから数千万ドル程度になることが多いです。
この段階では、薬が人に投与できるかどうかも分からないため、リスクは非常に高く、代わりに投資家は低い評価額で大きな持分を取得します。
3.Series A:会社を本格的な臨床開発企業にする
Series A の典型的な使途 : Series A は、単なる会社設立資金ではなく、通常は次の明確なマイルストーンまでを狙います。
・開発候補薬の正式選定
・GLP毒性試験
・CMC・製造プロセス確立
・IND提出
・Phase 1 開始
・場合によっては Phase 1 完了
・大手製薬会社からの資産導入
FDA にINDを提出して人への投与を開始するには、動物毒性、薬理、製造、臨床試験計画などのデータが必要です。
Vogenx の例
Vogenx は2022年に1,100万ドルの Series A を実施しました。同時に Kissei Pharmaceutical から mizagliflozin の日本・韓国・台湾を除く権利を導入し、Series A 資金を Phase 2 へ進めるために使用すると説明しています。
つまり Vogenx の Series A は、
資産導入
+
Phase 2の実施資金
という構造でした。これは典型的な創薬会社の Series A より後期です。mizagliflozin はすでに人への投与経験があったため、候補薬探索や初回人体投与を一から行う必要がなかったからです。
4.Series B:最初の臨床データから患者PoCへ進む
Series B は一般的に、安全に投与できる可能性が見えてきた薬を、患者で本当に効くか確認する段階の資金です。主な使途は、
・Phase 1 完了
・患者Phase 1b
・Phase 2 PoC
・用量選択
・バイオマーカー検証
・複数適応への拡張
・2本目のパイプライン臨床入り
です。FDAの定義でも、Phase 1 は主に安全性、PK、薬理作用を確認し、Phase 2 は患者で予備的な有効性を確認する段階です。
Series B で投資家が見るもの
・Phase 1 の安全性
・PKが予測どおりか
・標的を十分阻害できているか
・PD・バイオマーカーが動いたか
・患者で薬効が出る合理性
・Phase 2 を完走できる資金
・製造上の問題がないか
・競合薬との差別化
この時点から、専門性の高いバイオVCがさらに増えます。
5.Series C:Phase 2 データ、パイプライン拡張、IPO準備
Series C では会社は通常、初期段階の研究会社から、臨床データを持つ企業へ変わっています。典型的な使途は、
・Phase 2拡大
・Phase 2b
・Phase 3準備
・FDAとの End-of-Phase 2 会議
・商用製造プロセス
・複数パイプラインの並走
・CFOや商業責任者の採用
・IPO準備
です。Series C では、新しいタイプの投資家が入ることがあります。
ベンチャー型投資家
・5AM Ventures
・Frazier Life Sciences
・Third Rock
・venBio
・Forbion
・Atlas Venture
上場株にも投資するクロスオーバー型
・RA Capital
・RTW Investments
・Deep Track
・Cormorant
・Perceptive
・OrbiMed
・EcoR1
・Baker Bros.
・Janus Henderson
・Wellington
・Fidelity系
クロスオーバー投資家は、未上場株と上場株の両方に投資します。
6.Series D 以降:IPO前ラウンドになることが多い
Series D、E、F に厳密な意味はありません。企業がまだ上場していなければ、新しい資金調達のたびに、
・Series D
・Series E
・Series F
・Series C-1
・Series C extension
・Pre-IPO financing
・Crossover financing
などと呼ばれます。この段階では通常、
・Phase 2データが出ている
・Phase 3開始が近い
・IPOを12~18か月以内に目指している
・上場後の主要株主候補を集めている
という会社が多くなります。
Crossover ラウンドの意味
クロスオーバーラウンドは非常に重要です。例えば RA Capital、Deep Track、Cormorant、Janus などがIPO前に参加すると、その投資家が、
・未上場ラウンドに投資する
・IPOでも追加購入する
・IPO後の公募でも買い増す
・長期保有株主になる
という流れを作ることがあります。これにより会社側は、IPO 時に「すでに買う可能性の高い機関投資家」を確保できます。
ただし、クロスオーバー投資家が入ったから IPO が必ず成功するわけではありません。市場環境や臨床データが悪化すれば、IPO 延期や評価額引き下げもあります。
7.各シリーズで発行されるのは通常「優先株」
未上場ラウンドでは、投資家は通常の普通株ではなく、Series A Preferred Stock などの優先株を取得します。
優先株に付く主な権利
清算優先権
会社が売却・清算されたとき、普通株主より先に投資金額を回収できます。
典型例は、1x non-participating liquidation preference です。これは投資家が、
・投資額を優先回収する
・普通株へ転換して持分比率に応じて受け取る
の有利な方を選ぶ仕組みです。
取締役指名権
大きな投資家は、取締役を1名指名する権利を得ることがあります。そのため Series A や B を主導したファンドのパートナーが、取締役として、
・CEO採用
・CMO採用
・試験デザイン
・資金調達
・ライセンス契約
・M&A
に関与します。
Pro rata 権
次回ラウンドでも持分比率を維持できる権利です。例えば10%を保有するファンドは、次の Series B でも追加投資して10%を維持できます。
希薄化防止条項
次回の資金調達価格が大幅に下がる「down round」になった場合に、既存優先株主を一定程度保護します。
・重要事項への拒否権
・新しい優先株の発行
・会社売却
・多額の借入
・定款変更
・パイプライン売却
などについて、優先株主の承認が必要になることがあります。
8.シリーズの番号と臨床フェーズは一致しない
これは非常に重要です。
| 会社 | 資金調達ラウンド | 開発段階の例 |
|---|---|---|
| 会社A | Series A | 前臨床 |
| 会社B | Series A | Phase 2 |
| 会社C | Series B | Phase 3準備 |
| 会社D | Series C | Phase 1 |
| 会社E | Series A | 複数のPhase 2資産を取得 |
シリーズ名だけでは開発段階を判断できません。例えば、
・大手製薬会社から Phase 2 資産を取得した会社
・既存企業からスピンアウトした会社
・中国企業から後期資産を導入した会社
は、Series A でも Phase 2~3 段階にいることがあります。BRVE のように巨額 Series A で Phase 3 直前の資産を開発する会社がその例です。
9.なぜシリーズを重ねるたびに評価額が上がるのか?
バイオ企業では、データが出るごとに不確実性が低下します。
標的が正しいか
↓
薬を作れるか
↓
動物で効くか
↓
人に安全か
↓
標的を阻害できるか
↓
患者で効くか
↓
Phase 3 で再現できるか
↓
FDAが承認するか
↓
商業的に売れるか
各段階を通過すると、次回ラウンドの評価額が高くなります。
簡単な例
会社の Series A 前評価額が2,000万ドルで、1,000万ドルを調達する場合、
・Pre-money:2,000万ドル
・新規調達:1,000万ドル
・Post-money:3,000万ドル
・Series A投資家の持分:約33%
になります。
その後 Phase 1 が成功し、Series B 前評価額が8,000万ドルになれば、同じ1,000万ドルを調達しても、新規投資家へ渡す持分は約11%で済みます。
したがって会社は、次の価値上昇イベントまで届くだけの資金を調達し、データ後に高い評価額で次の資金を入れることを目指します。
10.トランシェ型資金調達
バイオ企業では、一度に全額を渡さず、
・IND 承認時
・First Patient Dosed 時
・Phase 1 完了時
・特定の安全性基準達成時
などに分けて資金を出すことがあります。例えば Series A が総額6,000万ドルでも、
初回:3,000万ドル
IND 承認後:1,500万ドル
Phase 1 開始後:1,500万ドル
という形です。これをトランシェ型資金調達と呼びます。
投資家にとってはリスク管理になりますが、会社にとっては、マイルストーン未達時に資金を受け取れないリスクがあります。
11.シリーズ資金調達から IPO へ進む流れ
ステップ1:IPO に耐えられる会社へ整備
IPO前には通常、次を整えます。
・独立取締役の追加
・CFO採用
・監査済み財務諸表
・SOX対応
・上場会社向け内部統制
・知的財産の整理
・重要契約の確認
・臨床データの監査
・上場後18~24か月程度の資金計画
・投資銀行の選定
ステップ2:S-1を作成
米国IPOでは、原則として Form S-1 をSECへ提出します。S-1には、
・パイプライン
・臨床データ
・リスク要因
・財務諸表
・資金使途
・主要株主
・取締役
・ライセンス契約
・優先株
・希薄化
・IPO後の株式数
などが記載されます。新興企業は最初のS-1を非公開でSECへ提出し、SECとのコメント対応後に公開することがあります。一定の条件下では、ロードショーの少なくとも15日前までに公開提出する必要があります。
ステップ3:SECコメント対応
SEC は薬が成功するかを判断するわけではありません。主に、
・表現が誤解を招かないか
・リスクが十分開示されているか
・財務諸表が適切か
・臨床データの説明が公平か
・関連当事者取引が開示されているか
を確認します。登録届出が有効になるまで、会社はIPO株式を販売できません。
ステップ4:ロードショー
CEO、CFO、CMO が機関投資家に説明します。説明内容は、
・作用機序
・臨床データ
・市場規模
・競合比較
・次のカタリスト
・資金ランウェイ
・M&A・商業化戦略
です。投資銀行は投資家の注文を集め、IPO価格を決めます。
ステップ5:IPO価格決定
IPO価格が決まると、
・発行株数
・調達額
・上場時価総額
・既存株主の希薄化
が確定します。引受会社には、追加株式を購入できるオーバーアロットメント・オプションが付くことが多く、一般的には募集株数の最大15%程度です。
ステップ6:優先株が普通株へ転換
Series A、B、C などの優先株は、通常IPO時に普通株へ自動転換されます。そのためS-1では、
・IPO前株式数
・優先株転換後株式数
・IPO後株式数
・Fully diluted 株式数
を分けて見る必要があります。
ステップ7:ロックアップ
創業者、役員、VCなどの既存株主には、一般的に約180日間の売却制限が設定されます。SECも、IPOのロックアップは多くの場合180日であり、解除時には市場への売り圧力が増える可能性があると説明しています。
12.IPOは「ゴール」ではなく、次の資金調達ラウンド
臨床バイオ企業の IPO は、事業が完成したことを意味しません。むしろ、未上場投資家から上場市場へ、資金調達の場を移すイベントです。
IPO 資金の典型的な使途は、
・Phase 2
・Phase 3
・CMC
・商用製造
・NDA/BLA準備
・追加パイプライン
・運転資金
です。Phase 3 は数百人から数千人規模になることがあり、Phase 1 や 2 より大幅に高額になります。そのため、IPO を実施しても承認までに何度も増資する会社が一般的です。
13.IPO 後の資金調達手段
① Follow-on public offering / 公募増資
株価が上昇したタイミングで、投資銀行を通じて新株をまとめて発行します。
例:
良好な Phase 2 データ
↓
株価上昇
↓
翌日または数日後に公募
↓
1億~3億ドル調達
↓
Phase 3 資金確保
バイオ企業では非常によく見られるパターンです。
② PIPE
上場会社が特定の機関投資家へ株式やプレファンドワラントを私募します。
参加者は、
・RA Capital
・RTW
・Deep Track
・Perceptive
・BVF
・OrbiMed
・Foresite
・EcoR1
などです。PIPE は公募より迅速に実施しやすく、臨床データ発表、逆合併、資産導入などと同時に行われます。未登録私募は、一定の適格・洗練された投資家を対象に実施され、SEC登録を免除される仕組みが利用されます。
③ ATM
ATM は、市場価格で少しずつ新株を売却する仕組みです。特徴は、
・一度に大量発行しない
・株価が高い日に売れる
・必要な分だけ調達できる
・実際に売らなければ希薄化しない
・日々の出来高が少ない会社には向かない
ことです。上場企業は Form S-3 などの棚上げ登録を使い、ATM を設定することがあります。実際のSEC開示でも、S-3の枠内で株式を市場価格で売却する仕組みが確認できます。
④ Shelf registration
将来発行する可能性のある、
・普通株
・優先株
・債券
・ワラント
・ユニット
をまとめて登録しておく仕組みです。登録しただけでは、実際に発行したことにはなりません。
⑤ Venture debt / 借入
株式を発行せず、融資で資金を得ます。ただし、赤字バイオ企業には返済原資がないため、
・金利
・ワラント
・担保
・最低現金残高
・臨床マイルストーン
などの条件が付きやすくなります。
⑥ ロイヤルティ資金調達
将来の売上ロイヤルティの一部と引き換えに、現在の資金を得ます。薬が成功した場合の将来利益は減りますが、株式希薄化を抑えられます。
⑦ 製薬会社との提携
大手製薬会社から、
・契約一時金
・研究費
・臨床マイルストーン
・承認マイルストーン
・売上マイルストーン
・ロイヤルティ
を受け取ります。これは株式希薄化を伴わないことが多い一方、資産の権利や将来利益の一部を譲渡します。
14.臨床データと資金調達の関係
バイオ企業は通常、データ発表の前後で資金調達します。
「データ前調達」
メリット
・失敗しても資金が残る
・不利な価格での緊急増資を避けられる
・試験を完走できる
デメリット
・データ前の低い株価で希薄化する
・成功後に調達すればもっと高く売れた可能性
「データ後調達」
メリット
・成功後の高い株価で調達
・希薄化を抑えやすい
・大型ファンドが参加しやすい
デメリット
・データ失敗なら調達できない
・株価が急落すると経営危機になる
優れた経営陣は通常、重要データの後まで十分な現金を残し、さらに次の試験開始まで進める資金を確保します。
15.ファンドはどの段階で何をするのか?
| 投資家 | 主に参加する段階 | 役割 |
|---|---|---|
| 創業者・エンジェル | Seed | 会社設立 |
| 大学・疾患財団 | Seed~A | 技術・助成金 |
| バイオVC | A~C | 経営陣、取締役、開発戦略 |
| Corporate VC | A~D | 製薬ネットワーク、提携 |
| Crossover fund | C~IPO | IPOのアンカー投資家 |
| Long-only機関 | IPO後 | 長期保有、公募参加 |
| Hedge fund | IPO後 | カタリスト投資、PIPE |
| 投資銀行 | IPO・公募 | 引受、価格形成 |
| Royalty fund | 後期・承認前後 | 非希薄化型資金 |
16.有力ファンドが入る意味
RA Capital、OrbiMed、Frazier、Forbion、Deep Track などが Series A や B を主導する場合、単なる資金提供以上の意味があります。
・CEO/CMOの採用
・臨床試験デザイン
・CRO選定
・FDA戦略
・次ラウンドの投資家紹介
・IPO主幹事の選定
・製薬会社との提携
・M&A交渉
・不採算プログラムの中止判断
に関与することがあります。特にファンドの担当者が取締役に入っている場合、会社戦略への関与は強くなります。
ただし、ファンドが入っていても薬の作用自体が強くなるわけではありません。以前お話しした通り、優秀なファンドは、良い薬を選ぶ確率と、試験・資金調達の失敗を減らす確率を高めるという位置づけです。
17.成功しなかった場合の流れ
臨床試験が失敗すると、会社は次のいずれかになります。
追加解析で別適応へ
または
主力薬を中止
または
人員削減
または
残存資金を使って新資産を導入
または
逆合併
または
会社清算
Down round
前回より低い評価額で資金調達することです。既存株主の希薄化が大きくなり、優先株の希薄化防止条項が発動することもあります。
Reverse merger
現金を持つ上場バイオ企業と、未上場バイオ企業が合併します。未上場企業は通常のIPOを行わずに上場でき、同時にPIPEを実施することが多いです。
JBIO の前身である Aerovate と Jade の合併も、このエコシステムに近い事例です。
18.Vogenx をこの流れに当てはめると?
Vogenx は大まかに次の位置づけです。
2022年
$11M Series A
Kissei から「mizagliflozin」を導入
↓
小規模 Phase 2 を実施
患者で初期PoC
↓
2026年
IPO申請
↓
IPO資金で Phase 2b EMERGE を実施
↓
陽性なら
公募・提携・Series 的な追加資金
↓
Phase 3
つまり Vogenx は、未上場の Series B、C を大型ラウンドとして何度も実施する代わりに、Series A で小規模 Phase 2 まで進み、その次の大型ラウンドをIPOという形で一般市場から調達しようとしていると考えられます。
実質的に Vogenx のIPOは、通常の大型バイオ企業でいう Series B/C 相当のリスクマネーを上場市場に求める構造です。これは LTGO のように Series A で1億ドル超、Series B でも1億ドル超を調達してからIPOする会社とは大きく異なります。
したがって VOGX を見る際は、
・Series A が1,100万ドルと小さい
・大型専門ファンドの支援が見えにくい
・Phase 2 が少人数
・IPO資金が Phase 2b の実施資金
・Phase 3 前に再度調達が必要になる可能性
・IPO時価総額と現金のバランス
・既存株主の取得価格
・ワラント・転換証券
・IPO後ランウェイ
を特に確認する必要があります。
バイオIPOを見るときの重要チェック項目
最後に、S-1で見るべきポイントをまとめると、以下です。
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 過去のSeries A~D価格 | IPO価格が既存投資家の取得価格より高すぎないか確認する |
| 主要投資家 | 専門バイオファンドが参加しているか確認する |
| 取締役 | ファンドが実際に経営へ関与しているか確認する |
| Insider participation | 既存投資家がIPOでも追加購入するか確認する |
| Use of proceeds | 調達資金で次の臨床データ読出しまで到達できるか確認する |
| Cash runway | 重要データの発表前に再増資が必要にならないか確認する |
| Preferred conversion | IPO時の完全希薄化後株式数を確認する |
| Warrants | 将来発生する可能性のある希薄化を確認する |
| Licensing obligations | 将来のマイルストーン支払いやロイヤルティ負担を確認する |
| Lock-up | ロックアップ解除後に生じる可能性のある売り圧力を確認する |
| Phase 2/3費用 | IPO資金だけで臨床試験を完走できるか確認する |
| 次のカタリスト | 企業価値や株価評価が上がる可能性のあるイベントが近いか確認する |
結局、バイオ企業の資金調達エコシステムは、科学的リスクを資金で次のマイルストーンまで運び、良いデータが出るたびに新しい投資家へ、より高い評価額で株式を渡していく仕組みです。
そして IPO はその最終地点ではなく、未上場VCから上場機関投資家へ資金提供者を交代する一つの通過点と考えるのが最も分かりやすいです。

