AAVベクター(in vivo)で自社パイプラインを持つ上場バイオ企業

AAVベクター(in vivo)で自社パイプラインを持つ上場バイオ企業

以下の比較表は、AAVベクター(in vivo)で自社パイプラインを持つ上場バイオ企業をまとめたものです。承認済み→後期→中期の順に整理しました(主要適応と代表プログラム/開発段階の目安付き)。

AAV(adeno-associated virus)ベクターは「体の中に “1回で長く効く遺伝子工場” を入れる手段」を実用レベルに引き上げたのが画期的です。近年では、血友病A(BioMarin)/B(uniQure/CSL)の承認は、その象徴的な到達点です。

承認済み(商用段階)

企業(ティッカー) 代表プログラム 適応 AAVプラットフォーム/血清型 開発段階
BioMarin (BMRN) valoctocogene roxaparvovec 血友病A AAV5 承認済み
uniQure (QURE) etranacogene dezaparvovec(HEMGENIX®) 血友病B AAV5 承認済み(販売はCSL)
Sarepta (SRPT) delandistrogene moxeparvovec DMD AAVrh74 承認済み(適応拡大進行)

後期(申請〜P2/ピボタル含む)

企業(ティッカー) 代表プログラム 適応 AAVプラットフォーム/血清型 開発段階
Rocket Pharmaceuticals (RCKT) RP-A501 / RP-A601 Danon病 / PKP2関連ACM AAV9 P2再開(実質ピボタル)/ P1
REGENXBIO (RGNX) RGX-314 / RGX-121 眼科(抗VEGF産生)/ MPS II NAV AAV(AAV8/9系) P3/申請準備〜後期
Lexeo Therapeutics (LXEO) LX2006 / LX1001 FA心筋症 / APOE4ホモ接合AD AAV(心・中枢向け) P2 / P1
MeiraGTx (MGTX) 遺伝性網膜疾患パイプライン ACHM 等 AAV2/5 P2〜後期
Adverum (ADVM) ADVM-022(ixoberogene soroparvovec) 眼科(抗VEGF発現) AAV.7m8 P2
4D Molecular Therapeutics (FDMT) 4D-150 / 4D-710 / 4D-310 眼 / 肺CFTR / 心Fabry 進化型AAV(独自カプシド) P2 / P2 / P1
BridgeBio (BBIO) BBP-631 先天性副腎過形成(CYP21A2) AAV5 P2
Solid Biosciences (SLDB) SGT-003 DMD(マイクロジストロフィン) AAV9系 P1/2
AAVantgarde Bio (AAVG) Dual-AAV(両眼向け) 遺伝性網膜疾患 Dual AAV P1/2

中期(主にP1/2)

企業(ティッカー) 代表プログラム 適応 AAVプラットフォーム/血清型 開発段階
Taysha Gene Therapies (TSHA) TSHA-102 / TSHA-120 Rett症候群 / 巨大軸索ニューロパチー(GAN) AAV9(中枢:髄腔内投与) P1/2(Rett:成人/小児) / 臨床継続評価(GAN)
Voyager (VYGR) 新規AAVカプシド+中枢標的 αシヌクレイン、タウ 等 独自カプシド(TRACER) 前臨床〜早期P
Tenaya (TNYA) TN-201 / TN-401 MYBPC3-HCM / PLN心筋症 AAV9 P1b / P1準備
GenSight (SIGHT) LUMEVOQ®(GS010) LHON AAV2 規制対応継続(欧州)
Sangamo (SGMO) in vivo遺伝子編集プログラム 肝・中枢 等 AAV(送達) P1/2〜前臨床
Sensorion (ALSEN) 内耳遺伝子治療(OTOF 等) 聴覚 AAV(内耳向け) P1/2
Benitec (BNTC) ddRNAi(AAV送達) 肝・神経筋 等 AAV(DNA-directed RNAi) 早期P〜前臨床

※網羅ではありませんが、投資家がまず押さえるべき銘柄は一通り入れています。

AAVが “効く理由”(技術のコア)

・長期発現
AAVは多くの体細胞で染色体に組み込まず(非組込み)にエピソームとして遺伝子を長期発現させやすい。→ “一回投与で数年単位の効果”が現実的。

・臓器指向性(トロピズム)
AAV8/9、rh74、AAV5など血清型や改良カプシドを選べば、肝・筋・心筋・網膜など狙った臓器での発現を高められる。

・安全性プロファイル
古いアデノウイルスや一部のレトロウイルスに比べ、宿主ゲノムに広く組み込まれにくいため腫瘍化リスクが低い(ゼロではないが低い)。また再増殖しない。

・実用スケールの製造が整備
HEK293/ベキュロウイルス法などGMP製造が確立し、商用レベルに届いた(コストは高いが“作れる”ようになった)。

とはいえ、“万能” ではない(重要な注意点)

・リドーズ困難
AAVカプシドに対する中和抗体ができると再投与が難しい。初回でのベネフィット最大化が課題。

・免疫関連有害事象
肝酵素上昇などがありステロイド等の免疫抑制を併用することが多い。

・発現の個人差
同じ用量でも発現量のばらつきや時間とともに低下が起こり得る(特に分裂する組織)。

・ペイロード制限
AAVの搭載可能サイズは~4.7 kb程度。大きい遺伝子は工夫(ミニ/マイクロ遺伝子、Dual-AAVなど)が必要。

・製造コスト/供給
スケールアップとコストが依然ボトルネック。価格・償還(支払い)モデルも進化が必要。

なぜ今、AAVが伸びている?”(トレンド)

・カプシド工学の進歩
進化型・指向性強化カプシド(例:AAVrh74, 4D系など)で効率と選択性アップ。

・プロモーター/遺伝子設計
臓器特異的プロモーターや自己調節の工夫で安全性と持続性を両立。

・規制・知見の蓄積
初承認の実績が治験設計・CMC要件の基準を明確化し、後続開発が進みやすくなった。

QURE、AMT-130 のピボタル相当 P1/2 で主要評価項目達成は、AAVベクター(AAV5)を使った遺伝子治療の成果

uniQure が、2025年9月24日に発表した「AMT-130 のピボタル相当 P1/2 で主要評価項目達成」のニュースは、BBCが報じる程大きな話題を集めましたが、正に AAVベクター(AAV5)を使った遺伝子治療の成果です。

「AMT-130」=AAV5ベクターにHTT遺伝子を抑制する人工マイクロRNA(miHTT)を載せ、脳(線条体)へ一度だけ外科的投与して変異ハンチンチンの産生を低下させる治療。

同社発表によると、統合機能指標 cUHDRS を用いた主要評価項目を達成。特に高用量群で36か月時点に疾患進行の75%遅延が統計学的に有意(外部対照マッチング)とされています。

「AMT-130」はAAV5が神経系での発現に適し、長期発現×単回投与というAAVの強みを活かした設計。QURE 自身もAAV5ベクター採用を公式に明記しています。

これによりハンチントン病で “疾患進行を有意に遅らせた” 初の遺伝子治療候補として、BTT(Breakthrough)指定→承認申請検討という道筋が現実味を増しました。

要するに、この大きなトップラインのデータは、AAV遺伝子治療が中枢神経疾患でも臨床的ベネフィットを示せた点が大きな意味を持ちます。